重視する専門知識分野の変化を読む
「将来、どんな仕事をしたいですか。そのためには、何を学ぶとよいでしょうか」。進路を考えるとき、こうした問いは一つの手掛かりになります。目指す仕事があり、そのために学ぶべきことが見えている人にとっては、背中を押す助言にもなるでしょう。
ただ、学びと仕事の関係は、それだけで捉えられるでしょうか。学校で学んだ分野が、その後の仕事で中心になる知識を決める。あるいは、両者が一致していることが望ましい。そんな前提を、私たちは知らず知らずのうちに置いていないでしょうか。
六芸社のData Instruments「学んだ分野は、仕事でどの位置にあるか」は、この関係を専門知識の側から眺めるための図です。何を学んできた人が、現在の業務をどのような分野と結び付けているのか。その組合せを一つの面に置き、地域や年齢、業務分野の回答範囲を変えながら見られるようにしました。
ここでいう「変化」は、一人の人の経歴を連続して記録したものではありません。出身として答えた分野と、現在の業務について答えた分野の違い、そして条件を変えたときに現れる集団の分布の違いです。その違いを手掛かりに、学びと仕事の間にどのような広がりがあるのかを考えます。
業種や職種とは別に知識から仕事を見る
仕事を知るためには、どの産業に属し、どのような職種に就いているかを見る方法があります。調査でも業種や職種は別に尋ねられており、そうした情報と組み合わせて分析することができます。
この図では、ひとまず専門分野の回答に焦点を当てます。同じ職種名でも、本人が業務と深く関係すると考える知識は異なるかもしれません。反対に、異なる業種や職種にいる人が、同じ知識分野を挙げることも考えられます。仕事の名前だけでは見えにくい関係を、回答者自身が選ぶ分野から読みたいのです。
使用するのは、内閣府がe-CSTIで公開している2025年の人材に関する調査データです。専門分野については、次の四つの関係を尋ねています。表は設問の要約です。
| 観点 | 尋ねていること | 選べる数 |
|---|---|---|
| 出身 | 最終学歴の研究室やゼミで主に扱った分野。所属していない場合は、最も力を入れた専門分野 | 一つ |
| 現在の業務 | 現在担当する業務に関係が深い専門分野 | 最大三つ |
| 事業の展開 | 関わる事業の新たな展開や成長に向けて、重要になってくると考える専門分野 | 最大三つ |
| 学習希望 | 仮に今、学ぶ機会が与えられたら学びたい専門分野 | 最大二つ |
まず使うのは、出身の一分野と、現在の業務について選ばれた分野のうち、最優先として記録された一分野です。一人につき一つの組合せとして数えます。後半では、同じツールで業務側の最大三分野まで回答範囲を広げて見比べます。
記事の題では「重視する」と表現しましたが、業務の設問が尋ねているのは、専門分野との「関係の深さ」です。知識の保有量や習熟度、重要度の点数を測ったものではありません。以下では、この業務側の一分野を「業務最優先分野」と呼びます。
出身も、単なる学部名や学科名ではありません。本人が自分の学びを特徴付けるものとして選んだ分野です。二つの回答を結ぶことで、その人が自分の学びと現在の業務をどう位置付けているかをうかがいます。
分野のラベルを四色に整理する
2025年の公開マスターには300の回答区分があります。このうち具体的な分野名があるのは298で、残る二つは「その他」と「ない」です。ただし、設問によって回答区分は異なり、現在の業務の設問には「ない」はありません。「その他」を含む299項目から分野を選びます。
ここには、日本文学、会計・簿記、感染症学など、さまざまな領域の名前が並んでいます。一つのラベルに複数の領域が含まれる場合もあり、すべてが同じ細かさで区切られた学問分類ではありません。専門分野の日英一覧では、元の名称を確認できます。同一覧には過去の調査の区分も掲載していますが、今回の分布配置が使うのは2025年の具体的な298分野です。
これらの分野を見渡しやすくするため、六芸社では四つのまとまりに整理しました。
| 記号と色 | まとまり | 分野数 |
|---|---|---|
| A・青 | 言葉・文化・社会 | 57 |
| B・ピンク | 数理・情報 | 38 |
| C・黄 | 自然・物質・技術 | 110 |
| D・紫 | 生命・健康・暮らし | 93 |
整理の出発点にしたのは、日本の高校の教科・科目です。国語や数学、理科といった共通教科だけでなく、工業、商業、農業、看護、福祉など、専門学科で学ぶ領域も手掛かりにしました。例えば、日本文学には国語から、会計・簿記には商業から、統計学やデータサイエンスには数学から近づく入口を考えています。
これは、その専門分野を高校で十分に学べるという意味ではありません。読者に比較的なじみのある学びから、その先にある専門知識を見渡すための整理です。高校の科目にそのまま対応させにくい分野には、数理・計算という方法、人や社会という対象、生命や医療という課題など、別の入口を設けました。
そこから四つのまとまりへ整理する際にも、機械的に教科名だけで振り分けたわけではありません。例えば、生物は生命の側へ、農業経済は経済や社会の側へ置いています。複数の領域にまたがる分野は、どの側面を主な手掛かりにするかを個別に判断しました。
対応の内容は、高校の教科・科目からの整理、知識の対象・方法からの整理、各分野の所属と配置理由で確認できます。参照表には、今回使う番号1~298の各分野について、所属と配置の理由を掲載しています。
四色は、調査主体の公式分類でも、回答の集まり方から自動的に検出したクラスターでもありません。六芸社が図を読むために置いた目印です。人数や期待する結果に合わせて、条件ごとに所属を変えることはしていません。
一つの位置と対角線が表すもの
図を読むときには、まず「真上から」を選んでみてください。横方向のX軸に出身分野、縦方向のY軸に業務最優先分野が並びます。両軸とも、A、B、C、Dの順に同じ298分野を置いています。各まとまりの中では元の分野コード順です。
一人の回答は、出身分野と業務最優先分野が交わる位置に対応します。同じ組合せを答えた人は同じ場所に重なります。その人数を高さにしたものが、斜めから見たときの細い柱です。底面の点は、一人以上の回答がある組合せを示します。
この並べ方では、二つの分野が一致する人は、正方形の左下から右上へ延びる対角線上に位置します。対角線の外にいるのは、出身分野と業務最優先分野に異なるラベルを選んだ人たちです。同じAの中でも二つのラベルが異なれば、対角線の外に入ります。AAやCCといった四角い領域の全体が、一致する人たちの場所なのではありません。
また、対角線から遠いほど大きく専門を変えた、という読み方はできません。ここでの座標の距離は、知識の違いや転換の難しさを測ったものではないからです。
斜めの全景に戻すと、組合せごとの人数が立ち上がります。回転によって画面上の左右は変わりますが、Xは出身、Yは業務、Zは人数という関係は共通です。高さは初期表示で「人数+1」の対数を使っています。人数の多い柱を圧縮して少人数の組合せも見えるようにしているため、高さが二倍でも人数が二倍とは限りません。柱や点を選ぶと実人数を確認でき、線形表示への切替もできます。
全地域・年齢上限なしでは、出身と業務最優先を結べる64,544人のうち、両方が具体的な分野である51,205人を描いています。「その他」「ない」を含む13,339人は図の外です。画面に現れる14,272種類の組合せは、五万人を超える人々が選んだ回答の重なりです。
一人ひとりの人生の全体が、この図に収まるわけではありません。それでも、これほど多くの人の学びと現在の業務との関係を、一度に視野に入れられる。そのことに、この図を見る面白さがあると感じています。
山の高さと面の広がりを一緒に読む
色は出身側のまとまりを表します。Aだけを選ぶと、言葉・文化・社会の分野を学んだ人たちが、業務側のどこに分布しているかを追えます。B、C、Dも同じように切り替えられます。
A出身の図内人数は24,309人で、四つのまとまりの中で最も多くなっています。業務側でもAを選ぶ人が多い一方、B、C、Dへも分布しています。出身が言葉・文化・社会であることだけから、その人が仕事で関わる知識の範囲を決めることはできません。
B出身は3,840人で、全体の図では小さく見えるかもしれません。それでも、業務側にはB以外との組合せも現れます。図上の量の小ささを、その知識の必要性や価値の小ささと取り違えずに見たいところです。
C出身は15,407人で、業務側もCを選ぶ人は11,494人います。しかし、出身と業務の個別ラベルまで一致する人は3,333人です。CCの濃いまとまりの中にも、異なる分野を結ぶ多くの回答が含まれています。
D出身は7,649人で、同一分野の割合は約39.4%と四群の中では高くなっています。ただし、同じDの別分野へも、A、B、Cへもつながっています。また、Dには医学だけでなく、生命、健康、暮らしに関わる多様な分野が含まれるため、この山をそのまま医師という職業の人数と読むことはできません。
全体では、対角線上に12,940人、外に38,265人がいます。図内の約74.7%は、出身と業務に異なる分野を選んでいます。対角線は面の中の一本の線にすぎませんが、その幾何学的な細さだけで人数の多少が決まるわけではありません。ここでは実際に回答を数えることで、外側にいる人たちの大きさを確かめています。
高い山だけでなく、その間や周囲に散らばる細い柱にも目を向けてください。少人数の組合せが広い面を埋める様子を、私たちは「人材の天の川」と捉えています。
学びと仕事と暮らしの場所で見比べる
地域フィルターには、二つの条件があります。一つは、どの場所を基準に回答者を選ぶか。もう一つは、その場所がどの都道府県にあるかです。
| 地域の基準 | 対象にする場所 |
|---|---|
| 居住地 | 現在暮らしている場所 |
| 就労地 | 現在働いている場所 |
| 出身大学等の所在地 | 調査上の最終学歴の教育機関の所在地 |
| 高校所在地 | 出身高校の所在地 |
これらを「学び・仕事・暮らしの場所」として見比べます。高校と大学等は学びの来歴に関わり、就労地と居住地は現在の活動と生活に関わります。大学等の所在地は、大学院修了者なら学部時代の所在地を指すものではありません。また、この条件を選ぶことで、対象を大学・大学院卒だけに限定するわけでもありません。
例えば、同じ県について居住地から就労地へ切り替えると、その県で暮らす人たちと、その県で働く人たちの分布を見比べられます。高校所在地を選べば、その県の高校を出た人たちについて、現在の業務との関係を眺められます。
切替によって選ばれる人々は異なります。同じ人たちが高校、大学、仕事、暮らしへ移動する経路を、この図だけで順に追っているわけではありません。また、人数の少ない県では、少人数の組合せが観測されにくくなります。面が疎らであることを、その地域には選択肢が存在しないことと直結させず、表示人数と一緒に読む必要があります。
分野の位置と高さの尺度は、地域を変えても共通です。「全地域」は海外などの回答区分も含みます。
年齢の上限を広げる理由
もう一つのフィルターは年齢です。25歳未満、30歳未満、40歳未満、50歳未満、60歳未満、上限なしを切り替えられます。年齢は2025年の調査時点のもので、「未満」なので境界の年齢そのものは含みません。
この区切りは、互いに重ならない年代別の集団ではありません。30歳未満には25歳未満も含み、40歳未満には30歳未満も含みます。若い人たちを残したまま、より年長の人たちを加えていく累積条件です。
この仕組みを設けたのは、学校を出てから経験を重ねる間に、業務と結び付く知識の分布が広がるのではないか、と考えたためです。特に若年側の違いを見られるよう、最初は25歳と30歳で区切りました。ただし、25歳未満という条件自体が、卒業直後や初職の人だけを選んでいるわけではありません。
年齢の異なる人々の現在を並べると、学びから仕事へ、その後の経験へと、知識との関わりがどう広がりうるかを考える手掛かりになります。その意味で、人生の時間をたどるように見てみたいという意図があります。
ただし、この調査は同じ人を何度も追うパネル調査ではありません。45歳の人が答えているのは、45歳時点の現在の業務です。その人の25歳や30歳の回答が保存されているわけではありません。累積集計も、一つの集団が年を取る様子を再現したものではありません。
異なる年齢の集団を人生の時間に重ねて考えるには、世代ごとの条件が比較できるという前提が必要です。例えば、ある世代の就職環境が大きく異なっていれば、その影響が現在の分布に残っている可能性があります。回答者が多くても、こうした世代差が自動的に消えるわけではありません。この図では、加齢や経験の影響と、世代ごとの教育・就職環境の影響を分けて推定していません。
広がりを四通りの指標で確かめる
年齢フィルターを実装する前に、分布の広がりを数値で確認しました。ここでは、出身分野と業務最優先分野が異なる人たちに対象を絞り、その人々が選ぶ業務側の分野について、多様性を計算しています。
対角線の外にいる人の割合と、その人たちの業務分野がどれほど多様かは、別の量です。外にいる人が多くても、業務側が少数の分野に集中している場合があります。反対に、外にいる人の割合が低くても、その人たちが幅広い分野に分布している場合があります。
多様性は、分野の種類を数えるだけでは十分に捉えられません。十の分野に同じ人数ずついる場合と、大部分の人が一分野に集中し、残る九分野には少人数ずついる場合とでは、広がりの様子が違うからです。
そこで、人数の構成比から「有効分野数」を計算します。これは、その分布の多様性が、人数の均等な何分野に相当するかを表す数値です。実際に回答があった分野の数とは区別します。
使ったのは、Hill数という共通の枠組みのq=1、2、3、4です。qは年齢や年数ではなく、人数の多い分野をどれだけ強く反映するかを調整する次数です。
| 次数 | 計算の見方 |
|---|---|
| q=1 | シャノンの有効分野数。少人数の分野も含め、構成比全体の広がりを見る |
| q=2 | 逆シンプソン指数。各分野の構成比を二乗して合計し、その逆数を取る |
| q=3 | q=2よりも、人数の多い分野の集中を強く反映する |
| q=4 | 人数の多い分野の集中をさらに強く反映する |
q=3、4は、構成比の三乗や四乗の合計を単に逆数にしたものではありません。それぞれ合計のマイナス二分の一乗、マイナス三分の一乗を取り、同じ「有効分野数」として読める形にそろえています。どのqでも、十の分野に均等に分布していれば有効分野数は十になります。
私たちが知りたいのは、出身と異なる知識に関わる道がどれほど開かれているか、ということです。ただし、この指標が直接測るのは、回答に現れた業務分野の多様性です。一人ひとりに実際に選べた仕事の数や、進路選択の自由度を測定した値ではありません。
図:2025年・全地域。出身と業務最優先の分野が異なる人たちについて計算した。横軸は個人の年齢ではなく、対象に含める年齢の上限。「70歳未満」は今回の対象では「上限なし」と同じになる。事前試算では5歳刻みで計算し、可視化ツールではその一部を切替条件として採用した。
対象を25歳未満から30歳未満へ広げると、q=1の有効分野数は約107.2から138.5へ増えます。q=2も約66.9から73.7へ増えます。一方、q=3は約45.1から46.2、q=4は約34.2から34.4で、変化は小さくなっています。
この違いからは、少人数側も捉える見方では広がりが増す一方、人数の多い分野を強く反映する見方では分布の変化が比較的小さい、と読めます。四通りの指標すべてで同じ大きさの跳躍があるわけではありません。
30歳未満より上へ対象を広げても、多様性が一様に増え続ける様子はありません。q=1は35歳未満付近を高いところとして、その後は緩やかに低下します。q=2はおおむね70前後で推移し、q=3、4は小さな増減を伴いながら緩やかに上がります。大きく姿を変え続けるというより、指標ごとの違いを残しつつ、比較的安定した範囲で推移しています。
この計算には、対象人数の違いもあります。図内人数は25歳未満が709人、30歳未満が3,081人です。そのうち多様性の計算に使った対角線外の人数は、それぞれ575人、2,327人です。構成比を使うので、同じ割合のまま人数だけを増やしても指標は変わりません。しかし、実際に対象を増やすと少人数の分野が新たに観測されやすくなり、出身分野などの構成も変わります。今回、その影響をそろえる補正は行っていません。
卒業後の学びを次の問いにする
この結果から考えたいことの一つは、学校を出た後の学習や経験です。仕事の中で新しい課題に出会い、別の分野の知識を吸収することが、業務と結び付ける分野を広げているのではないか。若年側で見られる分布の違いは、その問いを確かめてみたいと思わせます。
ただし、今回の結果だけから、25歳から30歳の間に学習が活発になったとは言えません。新しい知識をいつ、どこで、どのように身に付けたかを、この集計は示していないためです。学習による変化、担当業務や就業先の違い、世代差、対象人数や構成の違いを分けて調べる必要があります。
出身と現在の業務の分野が異なることも、卒業後に初めてその知識を得たことを意味しません。学校で複数のことを学んでいて、そのうち出身として選ばなかった分野が現在の業務と結び付いている可能性もあります。一つのラベルは、学んだことのすべてを表すわけではないのです。
それでも、出身の一分野だけから現在の業務との関係を説明し切れないことは、図に現れています。大学などでの学びを出発点としながら、その後の知識との関わりも含めて人材を考える。そのための次の調査や議論につなげたいと考えています。
最重要の一分野から、ほかの重要な分野へ
ここまでは、業務について最も優先する一分野を取り出して見てきました。しかし、調査では業務に関係の深い専門分野を最大三つまで選べます。最重要の一分野だけでは見えなかったつながりも、そこにはあるはずです。
上の図:最重要の1分野
図内51,205人、うち出身分野と一致する人は12,940人。
下の図:重要な最大3分野すべて
図内51,293人、延べ98,165件。出身分野と一致する人は17,292人。最重要以外に挙げた分野も含めるため、一人の回答が複数の位置に現れ、その分、図全体の色も濃く見えます。
いずれも2025年・全地域・年齢上限なし・全出身分野。同じ視点・対数の高さ尺度で表示しています。
ツールでは、最重要の一分野、選ばれた最大三分野すべて、最重要以外の分野を切り替えて見られます。全地域・年齢上限なしで比べると、出身分野と一致する回答を持つ人は、最重要だけの12,940人から、最大三分野では17,292人へ増えます。最重要には選ばなくても、出身分野を現在の業務に関係の深い分野として挙げている人たちがいます。
一方で、追加される回答の多くは、対角線の外にあります。一人が複数の分野を挙げるので、図全体の柱が増えたり高くなったりすること自体は自然です。そのうえで見たいのは、その回答がどこに重なるかです。出身と同じ分野へのつながりが加わるとともに、異なる分野へのつながりも数多く現れます。
最大三分野で見ると、同じ人が対角線上とその外側の両方に現れることもあります。学んだ分野が仕事に関わっていることと、仕事が別の分野の知識にも関わっていることは、同時に成り立ちます。学びと仕事の関係を、一致か不一致かの二つだけで捉えず、その重なりから考えてみたいと思います。
なお、「最重要以外」の分野の間には、第2位・第3位という順位は記録されていません。
対角線の外にいる人々から進路を考える
最重要の一分野に戻ってみると、出身分野と業務最優先分野が一致する人たちも、異なる人たちもいます。25歳未満に限っても、図内709人のうち575人、約81.1%が対角線の外にいます。初職の状態を特定した数字ではありませんが、若い回答者が皆、出身と同じ分野を業務最優先として選んでいるわけではないことは分かります。
対角線上のつながりには、その分野を学び、それに関わる仕事をするという、理解しやすい関係があります。しかし、対角線の外にも多くの回答があり、その行き先は幅広く分布しています。学んだ分野から同じ分野の仕事へ進む関係だけを、人材の標準的な姿として想定するのは十分でしょうか。
「将来の仕事を考えて、学ぶものを選ぶ」という助言は、一つの道筋を示します。それを唯一の望ましい道筋としてしまうと、まだ将来の仕事を決めていない人や、学びながら関心を広げる人、働く中で別の知識に出会う人の姿が見えにくくなります。
また、業務最優先として出身と違う分野を選んだことは、出身の学びが役に立っていないことを意味しません。例えば、哲学や数学で身に付けた考え方が、別の分野の課題を考える土台になっている可能性があります。この調査はその効果を測ってはいませんが、最優先の回答ラベルが一致しないというだけで、学びの価値が失われたと判断することもできません。
私たちは、図の対角線を「正しい進路」と呼びたいのではありません。一致する関係にも、異なる関係にも、その人の現在があります。人材の供給を考えるときにも、ある分野の出身者数だけを、その分野の仕事を支える人々の数とみなす前に、異なる出身からのつながりに目を向けたいと思います。
将来の仕事に直結するかどうかだけで、今学びたいことの価値を決めなくてもよい。これは、どんな学びでも希望する仕事を得られるという保証ではありません。多様な出身と多様な業務の関係を見たうえで、私たちが若い人に伝えたい姿勢です。
この図を回し、年齢や地域を切り替えながら、濃い山と、その外へ広がる細い柱の両方を眺めてみてください。対角線だけを見ていたときには見落としていた人々の姿が、そこにあります。
データと資料
出典は内閣府 e-CSTI 人材に関する分析・公開データ。2025年の公開データ p4ds2025 v1.0 を六芸社が整理・集計しました。人数は調査回答の実数であり、日本の就業者全体への拡大推計や回答者構成の補正は行っていません。
分野の選択肢と四つの設問については専門分野の回答から学びと仕事の関係を読む、回答するときの知識の捉え方については専門分野を聞かれたときに思い浮かべるものも参照してください。

