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人材マッチング調査オープンデータとは

公開日:

執筆:フラクタルくん(Codex)/編集:岩崎 琢哉

内閣府は、エビデンスに基づく政策立案を支えるデータ提供プラットフォーム「e-CSTI」で、人材マッチング調査の結果を「人材マッチング調査オープンデータ」として公開しています。

e-CSTIは、科学技術政策に関するデータと分析機能を共有する仕組みです。データを根拠に政策を考える、EBPM(Evidence-based Policy Making)を支えるために内閣府が整備しています。その柱の一つに「人材育成に係る産業界ニーズの見える化」があります。e-CSTIの概要で、その目的と構成が説明されています。

人材マッチング調査は、社会人に、大学などで学んだ専門分野や、現在の業務で重要な専門知識などを尋ねるアンケート調査です。学びと仕事がどのように結び付いているのか。社会で働く人は、どんな知識を必要としているのか。その関係を、人材育成を考える材料にするための調査です。

そして、その回答データは、私たちも手に取り、自分で集計できるように公開されています。

自分の問いで集計できる

このオープンデータで、まず知っていただきたいのは、自分の問いで集計できるということです。

年齢の分布、業種の構成、学歴別の人数。そうした集計結果を目にする機会はあります。しかし、見ているうちに「この年代の人だけなら、どうなるのだろう」「この分野を学んだ人は、どんな仕事に就いているのだろう」と思っても、その組み合わせの集計表があるとは限りません。

公開されているのは、集計表を作る前の、一人ひとりの回答データです。年齢、学歴、仕事などの回答について、どれが同じ人の回答なのかを対応付けられる形で提供されています。だから、「この年代で、この仕事に就いている人」のように、条件を組み合わせて集計できます。

データは、CSV形式の複数の表(テーブル)に分かれています。それをデータベースに取り込んだり、PythonやTableauなどで読み込んだりして、同じ人の回答のつながりを保ったまま、自分の問いに合わせて集計できます。

その意味を体験していただくために、六芸社では「人材調査を、11の属性から見る」という可視化ツールを作りました。

まず、性別でも年齢でも、気になるところを一つ選んでみてください。ほかのグラフも変わります。

例えば、性別の「男性」を選ぶと、男性の回答者だけを対象に、年齢や業種、職種などの集計をやり直します。さらに業種を一つ選べば、その業種で働く男性に対象を絞って、もう一度集計し直します。クリックするたびに、選んだ条件に合う人たちについて、ほかのグラフも描き直されているのです。

画面の上にある人数は、そのとき何人の回答を見ているのかを示しています。同じところをもう一度押すと、選択を解除できます。

ここで動いている11のグラフは、同じ回答者たちを、異なる属性から見たものです。年齢のグラフにいる人は、業種や職種のグラフにもいます。だから、どこかで条件を選ぶと、ほかの分布にもその条件が反映されます。

画面に描かれているのは集計結果です。その背後には、組み合わせを変えて何度でも集計し直せるデータがあります。この可視化で見せたかったのは、その関係です。

ツールには、2014・2016・2019・2021・2023・2025年度の全6回を収録しています。調査年を選び、その回の回答者について探索できます。年度によって対象や設問は異なるため、年を変えて比較するときには、それぞれの調査条件も確かめてください。

「それは本当なのか」と確かめるために

この調査の出発点にも、確かめたい問いがありました。

大学で育つ人材と、産業界が必要とする人材との間に、ずれがあるのではないか。専門分野ごとの人材の数や、身に付ける知識が、社会の側の必要と合っていないのではないか。そう語られるとき、実際には、どこで、どのようなずれが起きているのでしょうか。

現在公開されている調査の系列は、経済産業省による2014年度の「産業界と教育機関の人材の質的・量的需給ミスマッチ調査」にさかのぼります。公開元の調査事業一覧には、その後の調査も含めて経緯が記されています。

翌2015年5月には、文部科学省と経済産業省が「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」を共同で設置しました。教育と産業を担う両省が、産業界や大学とともに人材育成を考える場です。この経緯は、経済産業省のものづくり白書の概要(PDF)でも確認できます。

円卓会議の第1回では、産業界のニーズと教育内容の間にミスマッチがあるとすれば、それはどのようなものかを明らかにする調査が紹介されました。第1回議事録(PDF)には、働く技術者へのアンケートを通じて、その関係を捉えようとした議論が残っています。

岩崎がこの取り組みの大切さとして挙げるのは、「ずれがあるのではないか」という話を、実際に見て確かめる対象にしたことです。分野ごとの違いをデータで捉えられれば、どんな教育や学びの機会が必要なのか、議論を具体的にできます。

「言われていることは、本当なのか。まず確かめてみよう」。私たちは、この問いを、エビデンスに基づいて政策を考える発想の根にあるものとして受け止めています。

そして今、そのために集められてきたデータが、広く使える形で公開されています。当初の調査目的に沿って分析してきた人たちに加え、さまざまな立場の人が、それぞれの問いを持って、このデータに向き合えるようになりました。

調査の対象や設問は、その目的に合わせて定められています。新しい問いにどこまで答えられるかは、その問いと、調査で尋ねたことを照らし合わせて考える必要があります。データが公開されたことで、その可能性を自分で検討することもできるようになったのです。

特定の問いに答えるために集められたデータが、今では、自分の問いにどう使えるかを誰もが考え、試せるものとして公開されている。 私たちが今回、まずお伝えしたかったのは、このことです。

問いを持って、四つの切り口から見る

11属性の画面では、項目どうしのつながりを広く見渡せます。そこから関心のある問いを持って見るために、四つのテーマ別の可視化も用意しました。

テーマ:どんな人が、どんな仕事に就いているか

年齢、性別、業種、職種を組み合わせます。ある年代を選ぶと、仕事の分布はどう変わるでしょうか。ある仕事を選ぶと、そこにはどのような年代の人がいるでしょうか。

業種や職種は、まず大きなまとまりを見てから、その中の詳細を開けます。関心のあるところから、少しずつたどってみてください。

「どんな人が、どんな仕事に就いているか」を開く

テーマ:学んだことと仕事のつながり

最終学歴や大学専門区分を選び、業種と職種の分布を見ます。同じ学歴でも、学んだ分野によって仕事への広がりは違うでしょうか。逆に、同じ仕事には、どのような学歴や専門分野の人が集まっているでしょうか。

人材マッチング調査において、大学専門区分は、高校や専門学校の卒業者などには尋ねていない設問です。学歴によって尋ねられる項目が違うことも、画面の説明とともに確認できます。

「学んだことと仕事のつながり」を開く

テーマ:働き方と収入の分布

性別、年齢、雇用形態、勤務先の従業員数と、年収の関係を見ます。年齢と年収の組み合わせを色の濃淡で示すヒートマップと、年収ごとの人数を示す棒グラフを上下に並べています。

ヒートマップで気になるセルを選ぶと、その組み合わせが検索条件になります。「回答したくない」「無回答」を除いた分布も見られます。色の尺度は検索条件に応じて変わるので、条件を変えたときには、凡例の割合も併せて見てください。

「働き方と収入の分布」を開く

テーマ:住む場所と働く場所の関係

人材マッチング調査では、居住地と就労地のほか、出身高校や最終学歴の教育機関(大学・大学院など)の所在地も尋ねています(2014年度は居住地のみ)。

この可視化では、そのうち居住地と就労地を、職種、年齢、性別と組み合わせます。ある県に住む人を選んだとき、働く場所はどこに広がっているでしょうか。仕事や年代で、その関係は変わるでしょうか。

居住地と就労地の棒は同じ人数の尺度で描いています。地域の回答がない人を除きたいときには、どちらか一方でも無回答の人を除くスイッチを使えます。

「住む場所と働く場所の関係」を開く

画面の使い方について

どの画面でも、上部で調査年を選べます。検索条件を選ぶと、その条件に当てはまる人数が、画面上部に大きく表示されます。今、自分が何人の回答を見ているのかが、すぐに分かるようにしています。

選んだ検索条件は一覧に表示されます。それぞれの条件の右側にある「×」を押すと、一つずつ解除できます。

思いがけない気づきから、次の問いへ

四つのテーマは、問いの入口です。関心のあるところを選び、条件を変え、見比べているうちに、予想していなかった違いやつながりに、ふと気づくことがあるかもしれません。「なぜここだけ違うのだろう」「こちらにも同じ傾向があるのだろうか」。最初に持っていた問いから、別の問いが生まれてきます。

使う人の経験や関心が違えば、目に留まるものも違います。私たちが想像していなかった見方から、新たな気づきを得る方もいるでしょう。データに触れ、問いそのものを見つけていく。 私たちは、こうして自分で操作しながらデータに問いかけられるものを「対話的な可視化ツール」と呼んでいます。それを用意する意味は、思いがけない気づきや、新しい問いが生まれるところにもあると考えています。

さらに、自分の問いを追いたい方へ

五つの可視化には「表示中の集計をCSVで保存」するボタンがあります。気になった分布を数字で持ち帰り、表計算ソフトで確かめたり、別の図にしたりできます。ここで保存されるのは、その画面の集計結果です。

さらに別の項目を組み合わせたい、独自の方法で分析したいという方は、e-CSTIの公開元から分析用データと説明資料を入手できます。調査票や設問の説明も参照しながら、自分の問いに必要な集計を組み立ててください。

データの利用に当たっては、公開元の利用ルールに沿って出典を明記し、加工・分析した結果を公表する場合は、その実施主体も記載します。

手元で再集計してみると、画面を眺めていたときとは違う疑問が出てくることがあります。その疑問を追いかけられることも、データを自分で使える価値だと思います。

このデータから、もっと豊かな議論が生まれるように

岩崎は、この調査をめぐる分析や可視化の仕事に関わり、オープンデータの整備・作成も担ってきました。今回の紹介には、初めてこのデータを知る方への案内とともに、これまで一緒に取り組んできた方々への報告という気持ちがあります。

人材マッチング調査のデータを、誰でも使えるようになりました。そして、そのデータに触れる入口を、六芸社でも作っています。

公開されていることを知る人が増え、実際に使ってみる人が増えてほしいと思います。教育に携わる人、人材育成を考える人。そして何より、自分の学びや仕事について考えている人。それぞれが持つ問いを、同じデータに向けることができます。

見えた結果について、解釈が分かれることもあるでしょう。そのとき、どの年の、どんな条件の、何人について話しているのかを確かめながら、他の人と議論を続けられる。そこに、このデータが共有される意味があると思います。

データが使われ、そこからもっと豊かな議論が生まれるように。六芸社として、その入口を作る役目を引き受けていきたいとも考えています。

この調査の大きな特徴である、専門知識に関する設問群については、あらためて別の記事でご紹介します。

使ってみて気づいたことや、気になったことがあれば、ぜひお寄せください。今後の可視化や記事を考える手がかりにしたいと思います。

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執筆メタデータ

項目内容
原稿日2026年10月30日
執筆・資料照合フラクタルくん(Codex)
発案・問題意識・構成方針・編集岩崎 琢哉
素材人材マッチング調査の紹介と五つの可視化をめぐる、岩崎とフラクタルくんの対話。本文からリンクした内閣府・経済産業省の公開資料
原稿の段階第6稿を公開
備考岩崎による全体確認を経て、専門知識に関する設問群を別の記事で紹介する予告を末尾に加えました。
公開日: