Tableauのトラブルシューティング 02:開けるのに、直せない
グラフを見ていて、気になる違いに気づいた。この分類をもう少し分ければ、理由が分かるかもしれない。別の年度も加えれば、一時的な変化なのか確かめられそうだ。
ところが、そこで作業が止まる。受け取ったTableauには必要な項目がなく、元データも加工手順も手元にない。続きを調べるには、制作した人に問い合わせ、資料を探し、場合によってはデータの加工から作り直さなければならない。
ようやく調べるべきことが見えてきたのに、その場で確かめられない。分析するために用意した道具が、分析を止めてしまいます。
Tableauを誰かに作ってもらうときには、完成した画面だけでなく、その先の分析を進められるかも確認する必要があります。この記事では、社外への委託と社内の別担当者への依頼を含め、使う人と作る人が異なる場合の「発注」と「引継ぎ」を考えます。
1. 表示できるのに、元データを求められる理由
受け取ったTableauのグラフは表示される。フィルターを切り替えることもできる。ところが、データソースを確認したり更新したりしようとすると、元のExcelや接続先を求められ、先へ進めなくなることがあります。
Tableauでは、元データの全部または一部を、集計や表示に使う形式に変換して保存できます。Tableauが「抽出」と呼ぶものです。この記事では、抽出する操作と区別するため、保存されたものを「抽出データ」と表記します。
抽出データが手元にあれば、元のExcelに接続できなくても、その保存された値を使って画面を表示できる場合があります。一方、元データの訂正や追加を反映するには、更新元のファイルやデータベースに接続し、抽出データを更新する必要があります。Tableau公式:抽出の更新
例えば、制作した人が自分のパソコンに置いたExcelから抽出データを作り、そのExcelを渡していなかったとします。受け取った側は現在のグラフを見ることができても、そのExcelから抽出データを作り直すことはできません。
画面を表示するためのデータが残っていても、そのデータを更新するための材料が揃っているとは限らないのです。
ただし、元データを求められたからといって、直ちに失われていると判断する必要はありません。保存場所が変わっただけの場合や、接続先への権限が不足している場合もあります。まず、表示されたメッセージと接続先を確認し、必要なファイルの所在や利用権限を調べます。調査前のワークブックは残し、コピーで作業します。
2. 何を変えるかによって、必要なものが違う
Tableauを「直す」といっても、変更する場所はいくつかあります。
| 行いたい変更 | 必要になるもの |
|---|---|
| 色や配置、既存の項目によるフィルターを調整する | 編集可能なワークブックと、その表示に必要なデータ |
| 元の数値を訂正する、次年度のデータを加える | 更新元のデータと、抽出データを更新する手順 |
| 分類の付け方や、取り出す行・列を変更する | 元データ、分類表、前処理のフローやコード、作業手順 |
画面の調整なら、編集できる環境と権限があれば、手元のワークブックと抽出データで対応できることがあります。しかし、抽出データに含まれていない項目を追加する場合には、その前段階へ戻る必要があります。
さらに、Tableauへ読み込む前にExcelやTableau Prepなどで加工していたなら、その加工手順も必要です。加工後の表だけでは、どの行を除き、どう分類し、どの単位に換算したのかを再現できないことがあります。
.twbxという形式で受け取った場合も、中身の確認は必要です。この形式は、ワークブックと関連するデータなどをまとめられますが、それだけで前処理のフローや、さらに上流の元資料まで揃ったことにはなりません。Tableau公式:パッケージドワークブック
3. 答えに近づいたところで、分析を止めない
分析では、一つの結果が次の疑問を生みます。「違いがある」と分かれば、どこで違うのかを調べたくなる。その範囲が絞れれば、別の条件でも同じことが起きるかを確かめたくなる。この往復を通じて、判断の根拠が具体的になっていきます。
最初に用意された画面だけでは、そこまで確かめられないことがあります。そのとき、必要な項目を加えたり、集計条件を変更したりできなければ、分析は途中で止まります。それまでの発見は残っても、その発見を確かめ、判断につなげる作業ができません。
制作時の資料を探し、加工方法を推測し、同じ状態を再現する。その間、分析する人の時間は、問いを深めるために使えなくなります。担当者が替わるたびにこれを繰り返していては、分析を積み重ねることも難しくなります。
将来必要になる機能を、すべて最初から作り込む必要はありません。必要なのは、新しい疑問に応じて変更できることです。元データと加工手順を受け取り、自分たち、あるいは次の担当者が分析を引き継げる状態を確保します。
分析ツールを用意する目的は、知りたいことを確かめ、判断の根拠を得ることです。画面の完成後に、その目的へ向かって作業を進められるか。発注時にも引継ぎ時にも、この点を確かめる必要があります。
4. 数字の成り立ちを、受け取った側でも確かめる
元データや加工手順は、表示された数字に疑問が生じたとき、原因を調べるためにも必要です。
元データの段階で値が違っていたのか。前処理で行を取りこぼしたのか。Tableauの集計条件によって違いが生まれたのか。途中のデータと手順が残っていれば、段階ごとに比較できます。
それらがなければ、制作した側の説明を、受け取った側で検証することが難しくなります。制作時に意図していたかどうかにかかわらず、確認できない状態が残ります。
分析によってどんな発見が得られるかは、あらかじめ分かりません。しかし、元データが決めた手順で処理されているかは確認できます。分析の答えがまだ分からないことと、処理の正しさを確かめられないことは、別の問題です。
数値の一致を調べる具体的な方法は、第1回「元データの数字が表示されない・一致しない」で説明しています。その確認を行うためにも、数値の成り立ちをたどれる資料が必要です。
5. 発注時に、何をもって完成とするかを決める
制作者と利用者が、同じところを仕事の終点と考えているとは限りません。指定された画面を完成させるところまでが制作側の仕事になっていても、利用する側にとっては、そこから分析が始まります。
継続的な更新や変更が必要なら、その条件を発注時に明示します。「当然そこまで含まれるはず」と考えず、必要なデータと手順、引継ぎ後に行える作業、受取り時の確認方法まで決めておきます。
例えば、「次年度のデータは自分たちで更新する」「分類の変更は社内の担当者が行う」「将来は別の制作者へ引き継ぐ可能性がある」と伝えます。完成後の使い方が具体的であれば、引継ぎに必要なものも決めやすくなります。
| 引き継ぐもの | 残しておく内容 |
|---|---|
| ワークブックと表示に必要なデータ | 採用版が分かる、編集可能なファイル一式 |
| 作成に使った元データと加工後のデータ | 対象の版・年度・範囲と、各ファイルの対応関係 |
| 前処理のフロー・コード・手作業の手順 | 使った分類表や設定を含め、加工を再現するためのもの |
| 接続と更新の手順 | ファイルの配置、接続先、必要なソフトウェア・権限、実行順序 |
| 点検の方法と結果 | 比較条件、照合に使った処理、確認済みの範囲と残る課題 |
データベースなど、ファイルとして渡せないものは、受け取る側が接続・更新できる条件を整えます。作成者個人の環境だけで動く状態なら、担当者が替わった後の運用を確認します。引き継いだ資料を変更し、必要に応じて次の担当者へ渡せるかも、あらかじめ確認しておきます。
依頼文には、例えば次のように書けます。
納品後は当方でデータを更新し、必要に応じて集計条件を変更する予定です。ワークブックに加え、作成に用いた元データ・加工後のデータ、前処理のフローやコード、更新手順を引継ぎの対象としてください。外部のデータソースを使う場合は、当方で継続して利用するために必要な接続条件と権限を明示してください。引継ぎ時には、当方の環境で手順に沿って更新できることを確認します。
6. 受け取る側の環境で、一度更新してみる
引継ぎの確認では、ファイル一覧を見るだけでなく、受け取る側の環境で、担当する人が手順を一度実行します。制作した人のパソコンでは動いても、引継ぎ先では必要なファイルや権限が足りないことがあるためです。
確認には、元データとワークブックの作業用コピーを使います。例えば、確認用の数値を一つ変更する、または行を追加する。その変更が前処理、抽出データ、画面の表示まで反映されるかを確かめます。外部のデータベースを使う場合は、確認用の環境やデータを用意し、本番の値を試験のために書き換えないようにします。
数値の更新だけでなく、分類の変更も引き継ぐ予定なら、その作業も確認します。手順に書かれていない作業や、制作した人にしか分からない設定が見つかったら、その場で手順に反映します。
この一回の確認だけで、すべての計算や操作が正しいと保証できるわけではありません。ここで確かめるのは、約束した更新や変更を、引継ぎ先で実行できることです。数値の正しさについては、第1回で説明した照合と画面確認を行います。
六芸社では、分析を継続するための道具は、次に使う人が更新し、変更し、数字の根拠を確かめられる状態で引き継ぐことを大切にしています。完成した画面に加え、そこへ至るデータと手順も、道具の一部と考えています。